介護しやすい家づくり:バリアフリーの床材、建具
- 2024/10/16
前回は、バリアフリー住宅のキッチンについてご紹介しました。今回は、住宅全体に関わる重要な要素である床材と建具(ドア)に焦点を当てます。こちらも安全性と使いやすさに大きく影響するため、慎重に検討する必要があります。
介護に最適な床材の選び方
床材は、日々の生活の基盤となる重要な要素。住宅設計の中でも、実際に身体が触れる機会が断トツに多い箇所なので、お住まいになる方の状況にあわせた選定が必須となります。
車椅子を使いながら、リハビリで歩行訓練も行う予定の今回のプロジェクトでは、転倒時に怪我をしないような柔らかさがありつつ、車椅子がスムーズに動くような丈夫で柔らかすぎない床材が理想です。
具体的には以下のポイントに注意しました:
a) 適度な硬さ ・硬すぎず柔らかすぎない材質を選択:車椅子の操作性を確保しつつ、転倒時の衝撃を吸収できるもの
b) メンテナンス性 ・清掃のしやすさを重視 :耐久性のある素材を採用し、長期使用に耐える
c) 滑り止め加工 :安全性の高い、濡れた状態でも滑りにくい床材を使用
d) バリアフリー設計 :段差をなくし、スムーズな移動を可能に
むずかしい条件の床材選びですが、最終的には衝撃吸収性、耐動荷重性に優れた施設用のクッションフロア、東リの【ホスピリュームNW】を採用しました。機能とコストのバランスが良かったのも採用の決め手となりました。こちらの床材は介護施設、病院、保育園などで良く採用されるそうです。色柄が沢山あるのも良いところですね。
そして、床材の下張りとして衝撃吸収性が高く、音の発生を軽減する効果があるアンダーレイシートを張る仕様にしています。アンダーレイシートは、安全性が求められる場所に適した下地用シートで、今回使った東リ製のものは、4.5㎜の厚さでした。色々なメーカーから厚さ違いのものが出ています。
ドアの寸法、ハンドル
ドアは、移動の自由さと安全性に直結する重要な要素です。
今回は以下のポイントに注意しました:
a) 引き戸の採用 :車椅子の場合に限りませんが、住宅の場合引き戸を基本としています。
b) 操作性を向上 :特に力の弱い方や高齢の方でも使いやすいバー型の引手を採用
c) 開口部の幅 :車椅子でも余裕を持って通れるよう、90cm以上の幅を確保しています。今回は既製品のバリアフリータイプの吊戸を使いましたが、製作することも多いです。
d) 玄関の工夫 :間取りの関係で通常の引戸が使えなかったために3枚引きにしています。壁の2/3が開くのでかなりゆったりと通ることができます。
玄関は外部まで段差無しで繋がっています。車椅子のための配慮ですが、これからの住宅ではフラットな玄関が増えてきそうです。
バリアフリーの家を作るのは、使う方のご希望や状態に合わせ、床や扉なども慎重に選んでいくようになります。
でも、最初から完璧な家にする必要は無いと思っています。住んでいる人の具合が変わったり、新しい便利なものが出てきたりしたら、少しずつ家を変えていけるような融通が利くこと、そして住んでいる人が「ここち良いな」と思える家を作ること。そのためにお客様と一緒に知恵を出し合って、家づくりをしていきたいと思っています。