木造住宅で求められる『耐震性能』
- 2016/11/10
熊本地震の後から、木造住宅の耐震改修のニーズが高まっています。これまでも地震の度に耐震改修に対する関心は高まる傾向にありましたが、今回は住宅の築年数によって被害に差が出ていること、比較的新しい住宅も被害にあったことなどが報道されているせいか、専門家だけでなく一般の方も建物の耐震性能についてより詳しい知識を求めているように感じています。
私も、先月『熊本地震の被害報告』の講習会に行ってまいりました。
『熊本地震の被害報告』は、木造住宅の耐震性能の研究者による建物の被害を地域、築年数、工法により分類したレポートでした。
地域による被害の違いは地震波のエネルギーの大きさに直結していましたが、熊本で観測されたマグニチュード7.0は、阪神淡路大震災のマグニチュード6.9よりも大きく、震度も7を記録しています。
住宅を建てる際の耐震性能は、建築基準法により次のように定められています。
- 数百年に一度発生する(住宅の密集する都市で震度6強から震度7程度)地震に対して、倒壊・崩壊しない。
- 数十年に一度発生する(住宅の密集する都市で震度5強程度)地震に対して、損傷しない。
今回に地震では震度6強以上を記録し、建築基準法の想定以上の揺れだったために倒壊した建物多かったことは明らかです。ちなみに、既存建物の耐震改修では耐震診断で『評点1.0』が耐震性能の目安となっています。この『評点1.0』は建築基準法で定める性能と同レベルのもので、新耐震基準レベルの性能を持っている住宅ということになります。
上記の性能を持っている建物は1981年(昭和56年)に建築基準法が改訂され新耐震基準が定められた後の建物なのですが、具体的には2000年の法律の改訂で細かい仕様規定が定められた後でないといくつか問題があり、十分な耐震性能は発揮できていないようです。
具体的には、耐力壁(筋交いや構造用合板を張った地震に耐える強度をもった壁)の配置が北面だけに偏っていたりすることなく、バランスよく配置されているか、また、柱と土台や梁との接合部が指定以上の強度を持った金物等で接合されているか、などが2000年の法律改正で書き加えられました。これらの項目は大変重要で、今回の熊本の被害例でも南側に大きな掃き出し窓が多く耐力壁のバランスが悪い建物、築年数が比較的新しくても柱や筋交いの端部が指定の金物などで接合されておらず、釘打ちなど昔の方法で留められていた建物は大きな被害にあっています。
耐震改修を望んでいるものの、費用の問題、住みながら工事ができるのか、など気になることが多く踏み切れない方も多いと思います。耐震化されていない築年数の経った住宅では高齢の方が暮らしていることも多いのですが、その場合1階で寝起きすることも多く、なおさら地震時の安否が心配になります。
建物全体を耐震化するとなるとそれ相応の費用が発生してしまいますが、寝室周りなど最低点の部分だけ強化する工法なども少しずつ増えてきています。
『耐震診断』や『耐震改修補助』は各自治体で助成金を出しているところも多くあります。国の方でも耐震化率を95%に高める目標を打ち出していますので、今後も補助金などは現状より増えていくと思われます。気になる方はお住まいの地域の役所などに問い合わせてみてはいかがでしょうか。